-
最近の投稿
アーカイブ
カテゴリー
投稿日カレンダー
2026年1月 日 月 火 水 木 金 土 « 12月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31
皆さんこんにちは!
有限会社三陽鉄工所の更新担当の中西です。
鉄工所の仕事は「鉄を加工する」と一言で表されがちですが、実際には工程ごとに異なる技術と判断が求められます。切断、穴あけ、曲げ、溶接、組立、仕上げ、防錆、塗装。どれも単純作業のように見えて、実は品質と安全を左右する重要な工程です。そして鉄という素材は、加工を誤ると修正が難しく、時間とコストが大きく膨らむことがあります。そのため鉄工所では、基本を確実に積み上げ、段取りを徹底し、工程全体を見通す力が鍛えられます。ここに、鉄工所業ならではの面白さがあります。
まず切断。鉄の切断は、バンドソー、メタルソー、ガス切断、プラズマ切断、シャーリング、レーザー切断など、材料や要求精度、加工量、コストによって手法が変わります。同じ鋼材でも厚みが違えば方法が変わり、仕上げの要求が高ければ切断面の品質が重要になります。切断の精度が悪いと、後工程の穴あけ位置がズレたり、組立の直角が出なかったり、溶接で隙間が出て品質が落ちたりします。つまり切断は、加工の最初にして“後工程の品質を左右する要”です。良い鉄工所ほど、切断工程の管理が丁寧です。寸法の取り方、切断後のバリ取り、熱影響の考慮など、地味な部分を徹底します。
次に穴あけ。穴位置の精度は、現場施工の可否に直結します。ボルト穴が一つでもズレれば、現場で締結できず、長穴加工や再加工が必要になり、場合によっては部材の作り直しになります。穴あけは単純に見えて、実は最も「取り返しがつきにくい」工程の一つです。だから墨出し、治具、固定方法、ドリルの選定、回転数、切削油の使い方など、基本を徹底しながら精度を出します。穴位置の精度を守り切れることは、鉄工所の信頼に直結します。ここを安定してできるようになると、現場でのトラブルが減り、仕事の質が一段上がります。
曲げは、さらに奥深い分野です。板金加工や形鋼の曲げでは、スプリングバック(戻り)や割れ、局所的な伸び、歪みなどの問題が起きやすい。特に板厚が増すほど、曲げの反発が強く、狙い通りの角度が出にくくなります。曲げ順序や曲げRの取り方を誤ると、後工程の組立が成立しません。現場で求められる曲げは、「見た目が曲がっている」というだけでなく、寸法と角度を満たし、取り付けが成立することが求められます。ここでは経験がものを言います。素材や板厚による癖、機械の特性、治具の工夫。繰り返しの中で“体が覚える知恵”が増えていくのが、鉄工所の魅力です。
そして溶接。鉄工所の象徴とも言える工程であり、同時に最も奥が深い工程です。溶接には、アーク溶接、半自動溶接、TIG溶接、スポット溶接など様々な方法があり、材料や板厚、求められる強度や外観に合わせて選択します。溶接の難しさは、強度だけではありません。熱による歪みが必ず発生し、寸法が狂うリスクがあります。だから仮付けの位置と数、溶接順序、対称溶接、治具の固定、冷却のタイミングなど、歪みを抑える工夫が不可欠です。さらに溶接は“目に見える品質”でもあります。ビード形状が乱れていれば見た目で分かるし、スパッタが多い、溶け込みが浅い、アンダーカットがあるなど、品質の差が表面に出やすい。だからこそ上達の実感が得やすく、技術者としての誇りも育ちやすいのです。
組立と仕上げは、加工工程の集大成です。各部材の寸法を合わせ、直角や通りを出し、必要な補強を入れ、最終形状に仕上げます。ここで重要なのは、単に組み立てるだけでなく、現場での据付や施工のしやすさまで考えることです。現場でボルトが締めやすいか、搬入経路を通るか、クレーンで吊れるポイントがあるか、点検のためのスペースを確保できるか。鉄工所は「作る」だけでなく「使われる」ことを見据えて形にする必要があります。この視点が持てるようになると、仕事の価値は大きく上がります。
最後に防錆と塗装。鉄は錆びる素材です。屋外や湿気の多い場所では特に腐食が進みやすく、放置すれば強度低下や安全リスクにつながります。だから鉄工所では、ケレンや下地処理を丁寧に行い、適切な下塗りを施し、上塗りで膜厚を確保します。塗装は「見た目のため」と思われがちですが、本質は耐久性の確保です。長く安全に使ってもらうための工程であり、鉄工所の仕事を未来へ延ばす役割を担っています。
このように鉄工所の現場は、一つひとつの工程がつながり、最終品質を形づくります。小さなミスが後工程に波及し、大きな手戻りになる世界だからこそ、段取りと基本が重要になり、技術が磨かれます。そして技術が磨かれるほど、作れるものの幅が広がり、より難しい案件に挑戦できるようになる。鉄工所業の魅力は、技術の積み重ねがそのまま成長となって現れ、社会に役立つ形で残ることにあります。