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三陽鉄工所メカニック通信~9~

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皆さんこんにちは!

有限会社三陽鉄工所の更新担当の中西です。

 

「まちの骨格」をつくる仕事

鉄工所という言葉から、多くの人は「鉄を切って、溶接して、組み立てる場所」というイメージを思い浮かべるでしょう。それは間違いではありません。しかし鉄工所の本質は、単なる加工場という枠に収まりません。鉄工所は、社会を成立させるための“骨格”をつくる仕事です。建物の階段や手すり、工場の架台や配管支持、倉庫のフレーム、機械設備の部品、搬送装置の構造体、店舗の看板フレーム、門扉やフェンスなど、私たちが日常で目にする「当たり前の構造物」の裏側には、鉄工所の技術と判断が息づいています。普段は意識されにくい一方で、鉄工所の仕事が止まると建設も製造もメンテナンスも滞ります。目立たないが欠かせない。そこにまず、鉄工所業の大きな魅力があります。

鉄工所が扱う鉄は、硬く、重く、冷たい素材です。素材としては扱いにくい側面もあります。ところが、その鉄を「使える形」に変えるためには、人間の知恵と技術が必要です。切断、穴あけ、曲げ、溶接、研磨、塗装、組立、据付。これらの工程を通して、ただの材料だった鋼材が、目的を持った構造物へと変化していきます。加工が進むにつれて、形が立ち上がり、寸法が整い、強度が保証され、機能が生まれる。そのプロセスは、ものづくりの醍醐味そのものです。鉄工所の魅力は、成果が手触りのある形で現れる点にあります。完成品は重く、堅牢で、明確に「存在」します。自分が関わった仕事が、目に見える形で社会に残る。これは、達成感が非常に大きい世界です。

鉄工所の仕事は図面から始まります。図面には寸法、材質、板厚、穴位置、溶接記号、仕上げ、組立順序のヒントなど、数多くの情報が詰まっています。鉄工所の技術者は、図面を“読む”だけではなく、“現場で成立させる”ために理解します。例えば、あるフレームを組み立てる場合、溶接順序を誤れば歪みが発生して寸法が合わなくなることがあります。材料の取り都合を間違えれば、後の穴あけ位置がズレることもあります。現場に搬入する際の運搬条件や、据付時の作業手順を考慮しないと、完成品が現場で取り付けられないリスクもあります。鉄工所では、図面と現場を往復しながら「成立させるための判断」を連続的に行います。ここに、机上だけでは得られない実務知の面白さがあります。

また鉄工所の仕事には、一品ものやオーダーメイドが多いという特徴があります。大量生産の製造業とは異なり、建築金物や現場架台、設備改修部材などは、現場ごとに条件が異なります。既存設備の寸法に合わせる、干渉物を避ける、耐荷重を満たす、作業者の動線を確保する、点検性を確保する。こうした条件を踏まえた“解決”を形にするのが鉄工所です。だからこそ案件ごとに課題が違い、同じ作業の繰り返しになりにくい。飽きにくい仕事であり、経験を積むほど引き出しが増える仕事です。ある現場で学んだ工夫が別の現場で活きる。その積み重ねが、職人としての成長を確かなものにします。

鉄工所業の魅力を語るうえで欠かせないのが、安全と品質への責任です。鉄工所がつくる構造物は、人が使う、あるいは人の近くに設置されることがほとんどです。手すりなら人の体重がかかります。階段なら毎日多数の人が上り下りします。架台なら機器の荷重を受け続けます。もし溶接不良があれば、破断や落下の危険が生じます。穴位置がズレてボルトが適切に締結できなければ、施工不良や耐力不足の原因となります。防錆処理が不十分なら腐食が進行し、長期的な劣化を招きます。だから鉄工所では、見えない部分にこそ気を配ります。ビードの形状、溶け込み、歪み、寸法精度、膜厚、ボルト孔の精度。そうした品質を当たり前に確保する姿勢が、信頼を生み、仕事を継続させる。目立たないが社会の安全を支える“裏方の主役”であることが、鉄工所業の誇りであり魅力です。

鉄工所の仕事が完成したときの喜びは、単に納品して終わるものではありません。自分が加工したものが現場に取り付けられ、人がその上を歩き、手すりを握り、機械が安定して稼働し続ける。街のどこかで、自分の仕事が静かに役立ち続けている。後日その場所を通ったとき、あるいは同業者と話したときに、「これは自分がつくった」と胸を張れる。そうした感覚は、鉄工所ならではのものです。鉄工所業の魅力は、鉄という素材を通して、社会の土台を支える“確かさ”を手のひらで実感できることにあります。